志望動機
先日、あるITエンジニアが採用面接で転職理由を聞かれ、「もっと給料が欲し語ったからです」と答えたということが話題になっていました。それが社長面接だったということに驚いた人も多かったようですが、更に合格したという事実が衝撃を増幅させたのだと思います。
私自身が長年面接に関わってきた中で、一人だけお金を転職理由の一つに挙げた人はいましたが、ズバリそれだけを語った人はいません。ただ、その人曰く、「もちろん面白い仕事がしたい。でも、たとえそうでない仕事にアサインされても一生懸命取り組みます。だったら給料は高い方がいい。」というロジックだそうです。
正直なところ、分かるようなわからないような意見だとは思いますが、面接をした社長さんは、「
お金でモチベートされるというのも悪くはない」と合格にされたそうです。
このエピソードから何を学ぶかは人それぞれだと思いますが、一つ確実に言えることは、この候補者と会社のカルチャーがフィットしたということです。そして、更に言うとすれば、面接において正直に自己を晒すことは大切だということだと思います。もし彼が、本心とは異なる志望理由を語っていたら、その内容によっては、つまらない人物と思われて不合格になっていたかもしれないからです。
よく新卒の採用面接で志望順位を聞く面接官がいます。個人的には何の意味もない愚問だと思いますが、会社によってはその回答が合否に大きな影響を与えることもあるようです。
ただ、この手の質問は答える側にとって非常にセンシティブな質問なので、正直に答えるべきかどうか迷う学生さんが多く、とても気の毒に思います。さんざん迷った揚げ句、たとえそうでなくても「御社が第一志望です」と回答する学生さんも多いのですが、それがわざとらしいということから、最近は、「御社は第一志望群の一社です」と答えるのが無難だと面接マニュアルに書かれているようです。
ところが、この第一志望群という言葉に苛立ちを覚える面接官が多いのも事実です。いかにも、その場を切り抜けるために用意された言葉が不愉快にさせるというのも理解できなくはありません。
では、何と答えるのが正解か。
それは、意外に簡単で、ここぞとばかりに志望動機や会社を選ぶポイントをうまく伝えることなのです。「御社の○○な点を非常に魅力的に思っていますが、逆に、△△な点は自分に合うのかどうかしっかり見極める必要があると考えています。自分の中でそこがクリアになれば、志望順位は自然とハッキリしてくると考えています。」というのはどうでしょう?
○○の部分や△△についての考察が鋭ければ説得力を持ちますし、真剣に会社を見極めようとしている姿勢もストレートに伝わります。
面接でウソを言うことは決してお薦めしません。ただ一方で、どんなことにも正面から正直に回答する必要もないと思います。事実をいかに適切に表現するのかという視点で考えていくと、面接官の意味のない質問にもうまく返答できると思います。