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企業における人材育成

企業で新卒採用を担当していると、学生さんからよく研修制度についての質問を受けます。入社後、自分がどのようにスキルを磨いてキャリアアップしていくのかということについて関心を寄せる姿に感心する一方で、質問の仕方によっては、「会社に育ててもらう」という受動的な印象を受けることもあります。

厚生労働省が民間企業を対象に実施した能力開発基本調査によると、能力開発の責任主体は「会社」と捉えている企業が全体の75%という結果で、そこから考えると、会社に育ててもらうという考え方は会社側の思惑と一致しているように感じます。

しかし一方で、会社が人材育成について課題と感じていることの一つに、「せっかく育成してもすぐに辞めてしまう」という項目が挙がっており、人材育成の難しさをあらためて考えさせられます。

日本の経済が安定的に右肩上がりの状態を保ち、且つ、ビジネス環境が安定しているという前提のもとでは、終身雇用や年功序列の給与体系と併せて、一律の人材育成体系も機能すると考えられます。しかし、ビジネス環境の変化が激しく、昔に比べてビジネスのサイクルが短くなって極めて短期間にマーケットシェアや業績が乱高下する厳しい競争の時代に、果たして今まで通り「会社が責任主体となって人材育成の体系を決める」という考え方がふさわしいのかということについては、今一度考え直す必要があるように思えてなりません。

もちろん、全ての会社は人によって支えられているということは言うまでもありません。しかし同時に、競争環境の厳しい状況下では、会社はそのビジネス戦略や組織体制をビジネスプランに合わせて柔軟に変えていくことも求められます。

このような状況のなかで会社に求められる人材育成の責任は、特定の能力を伸ばすための研修体系を構築することではなく、仕事を通して総合的なビジネススキルを向上させるために適切な機会(新しい仕事)を提供することにあると思えます。どんなビジネス環境においても、個々人が常に適切な能力を発揮できるように、柔軟な姿勢や適応力、高い総合力を身につけられるように組織を創っていくことこそが能力開発なのではないでしょうか。

こうした考えに立つと、個々の社員は、会社から提供される新たな機会に適応して能力を発揮するために準備をしておく必要があるわけですが、その責任主体は自ずと自分自身ということになってきます。

厳しい時代と感じながらも、グローバルにビジネスを展開することを前提とすると、やはり人材育成もグローバルスタンダードに倣う必要がありそうに思います。

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